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羽場 久美子、道智 万希子(国大3)

女性と若者、熱意ある私たちが21世紀を変えていく! -日本の政治学者、国際政治学者、青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科教授 羽場 久美子(国大3)さんへのインタビュー

 たまたま羽場久美子さんを同窓会先輩からご紹介いただく機会があったが、同期であるとわかり早速メールでご挨拶した。

羽場久美子さんは大学院教授の職にとどまらず、国内外の多くの学会、評議会、委員会でリーダーシップをとり大活躍されているが、関係されている多くの団体は数が多くここに列挙しきれないので、まずは”羽場久美子の世界”を語るホームページ、http://side.parallel.jp/kumihaba/?p=26 をご覧いただきたい。

そのご活躍の範囲は広いが、羽場さんご自身も普段から強く思いを寄せているという「日本と世界の若者」、「女性研究者の地位向上」という二つのテーマに絞って今回メール上でのインタビューをさせていただいた。

道智: 今回は津田塾大学同窓会アジアネットワークにご参加いただきありがとうございます。

羽場: ありがとうございます。多くの津田の方々が世界中で活躍しておられて、本当に敬服し、感動しております。津田スピリッツは何といっても、それぞれの場で、楽しく、目標を持って、ひたむきに活動されていることですよね! 津田卒業生が、6歳で渡米し人生を変え日本社会を変えた津田梅子先生から授かったスピリッツを生かし、ネットワークを生かして各地で活躍され、社会と人々を楽しく幸せにしていかれるのを拝見し、最近アジアに呼ばれたりして行くことも多いので、ぜひ皆様の活動の一端にかかわらせていただけたらいいなあと思っております。

道智: 早速ですが、羽場さんは日本の学生だけでなく、いろいろな国からの留学生とも普段から接しておられるのですよね?

羽場: はい。大学院ゼミでは10人中8人までが外国人です。それを生かし、昨年12月には、若者を世界にはばたかせよう!異なる国々の人たちと、異なる見解をぶつけ合って悩みを解決しよう!をスローガンに掲げて、「紛争解決と平和・繁栄構築」を考える若者国際会議を、日本を含む12か国(日中韓台湾、インド、アメリカ、独仏ロ・オーストラリア、バングラデシュ、ネパール)の留学生たちと一緒に開催し、とことん話し合いました。「国によって全然意見が違うんだ!」ということがわかって、学生の皆さんもとても興奮し喜んで、時間を超過して話しあい続けました。スカイプで結んで、ロシアのサンクトペテルブルク国立大学の学生さんとも話しました。2日続けてやったため、懇親会でも皆さん和気あいあいとお酒や食事を片手に話し込み、仲良くなり、またぜひやろうね!と約束して別れたことが最大の収穫です!♡

道智: そうですか、よかったですね。大学生の時期にいろいろな背景を持つ若者たちが相互理解を深め、自分と異なる文化や考えを持つ人たちに興味を持つことは大切ですね。最近の日本の若者は外に出たがらないという意見もあるようですが、実際大学で教鞭をとられていてどう感じておられますか?

羽場: 重要なご指摘ありがとうございます。青学の場合は特殊かもしれませんが、ゼミ生のほぼ3分の1は、学部時代に1年間海外に出かけていきます。多い方だと思います。他方で日本から海外に出る留学生は最近は少し増えているといわれますが、統計では年間8万人の留学生のうち、半分は1か月以下!(これは留学か?笑)といわれています。その最大の原因は、3年から4年に長々とおこなわれる就職活動です。これが他国に比べても勉強しない大学生を作りだしている根源です。

留学していると就職できないからしない、帰国子女は生意気だから取らない、という悪循環を生み出しているといわれます。一度学術会議、文部科学省、経団連が組んで、4年生の8月から就職解禁、それまではなし!というラディカルな方法をとったことがあります。私たちは積極的にそれを推進したのですが、企業学生とも評判がよくなく、1年で朝令暮改となりました。日本の場合、9割近くは経団連傘下にはない中小企業で、中小企業が就職協定を守らず就職面接を行って、ザル協定になり、経団連の大企業だけやっても意味がない、ということで元に戻り、さらに経団連は1年からでも就職活動ができるようにという逆方針を発表しました。一番勉強でき人生について考える時期に黒スーツを着て長期にわたり面接就職活動が続くことはやめねばなりませんが、逆に、拡大している状況です。

毎年THE(Times Higher Education, UK)やQS(Quacquarelli Symonds, UK)による世界大学ランキングでも日本は今や中国・香港やシンガポール、韓国に抜かされています。THEでは、東大は世界で42位、アジアで8位、QSでは、2015年以来トップ10に入ったことがなく、現在11位です。

他方、中国・香港はTHEでは中国・清華大学がアジアで1位、香港大学を含めてアジア10位以内の5校を占めており、QSでは中国香港はアジア10位以内に6校も入っています。日本は1か0。THEでもあと2,3年で日本はアジアトップ10から落ちてしまうといわれています。日本の私立大学は200番台の早稲田・慶応を除けば1000番までに数10校が入っているという状況。 津田塾大学は日本国内ランキングのうち教育充実度で20位(昨年41位)で健闘しています。本気で国際競争力を考えないといけない!という時、医科大学などで女子入試差別が発覚しました。女子をもっと伸ばすべきです!日本の大学のグレードアップを図るためには、留学機会を増やし自分の頭で考え行動する学生を増やしていくこと、女子学生を正当に評価し伸ばしていくことが不可欠だと思います。津田の女子学生たちには本当に頑張ってほしいと思います!

道智: なるほど。。。。就職活動が留学の邪魔になっている!これは解決が難しいですね。日本外の多様な世界を直接見て、経験することは若い間にこそやってほしいと思いますが、、、私は若い頃海外に対して大きな憧れがあり、外に行ってみたい。そのためには英語を勉強して、などと思いました。それが「英語の津田塾」に繋がったところがありました。 留学は別にしても、就職後でも世界とつながるために必要な英語力を高めていくことは求められると思います。最近の日本の学生たちの英語力はどうですか?

羽場: おっしゃる通りですね!日本の学生は勤勉でまじめなのは事実なので、2020年以降の大学での英語の抜本的改革、話す、書く英語の外部試験(新英検、TOEFL, IELTSなど)の導入によって、早晩、高校や大学の英語の先生をしのぐ語学力の学生は続々と出てくるのではと思います。大学も多くの授業を英語でやるようになっており、ディベートやディスカッション、プレゼンを導入する授業も増えました。昔に比べては、ダントツに伸びていると思います。

今後はただ話せるだけでなく、読み書き話す聞くを生かし、いかに考え思索する能力を磨いていくか、自分の考えを相手に説得的に伝え、また政策立案など提言もできるか、が重要になってくると思われます。

道智: 確かにそうですね。学生本分の力をつけよということですね。ところで、外国から日本に来ている留学生たちと日本の学生の違いなどを羽場さんはどう感じておられますか?

羽場: 私の大学院のゼミ生は、ほとんど外国人で、日本人はといえば、昨年前期は社会人一人だけNHKの方、後期も一人だけ省庁の方がいました。、授業も英語と日本語のちゃんぽんです。インド人、アメリカ人、中国人、タイ人、モンゴル人、 ロシア人、ウクライナ人、韓国人、オーストリア人など。これだけいると、外国人同士の差異のほうが外国人と日本人の差異より大きくて面白いです。中国人や韓国人は勤勉でとても礼儀正しく優秀です。昨年の学部のゼミの3年4年、大学院のゼミのゼミ長さんはいずれも韓国人や中国人、ウクライナ人とのハーフの学生さんでした。外国人の留学生は、リーダーシップがある人が多いように思えます。 他方日本人学生のいいところは、心が細やかなところ。人を引っ張って押し上げるより全体をまとめ皆が居心地がいいよう気配りをしてくれる。それぞれにいいところがあると思いますが、日本人の学生はもう少し積極的になってもいいかな、と思うときもあります。概して女子のほうが深く考え、皆と協力して人のために働こうという人が多いようですね。

道智: 日本の学生、頑張れ!ですね。では、もう一つのテーマ、「女性研究者の地位向上」についてお話しください。

羽場: 現在、JAICOWS(“Japanese Association for the Improvement of Conditions of Women Scientists”)*という、学術会議の外部団体で、「女性科学研究者の環境改善を考える懇談会」の会長をしております。学術会議でまだ女性が一人であった時代に創設され、数々の改革を行ってきた団体です。今は非常勤講師の賃金格差の問題や、大学での女性研究者の地位の向上、セクハラ・パワハラ対策などを訴えています。

日本は、とても住みやすく安全な国ですが、女性のエンパワーメントがとても低い社会です。2018年末の世界経済フォーラム(WEF)の男女平等ランキング、ジェンダー・ギャップ指数でも、日本は149か国中110位。先進国で最下位だけでなく、世界でも最低レベルです。なぜでしょう?健康指数や乳児死亡率の低さでは1位です。

でも経済や政治で女性が占めるランキングがビリに近いのです。大学では女子学生のほうが優秀で、総代も女子学生になることが多いのに、企業に入るとなかなか管理職になれない。研究者も例外ではなく、大学でも教授に女性は少なく、助手、非常勤講師に女性が集中しています。女性議員も少ない。何とかこの状況を変えたい!と思います。

ちょうど2019年7月4,5,6日にシンガポール南洋理工大学で、世界国際関係会ISA,アジア太平洋(AP)地域国際会議が開かれましたので、それを活用して、ISA APの副会長として、「若手女性の活躍のために!」と題するラウンドテーブルを、東京、韓国、台湾、アジア各国を結び、また米欧オーストラリアなどのアジア人女性研究者の協力によって準備しました。

若い女性研究者や女性の大学卒業者をサポートし、どうしたら職が見つけられるか、どうしたらパワハラやセクハラを撃退し、より良い職場環境を作れるかなどを企画して報告者の経験を募集したところ、日本、台湾、韓国、シンガポール、オーストラリア、インド、ASEAN各国の学生や若手研究者が参加し、それぞれ涙を交えての熱のこもった、胸打つ討論会となりました。参加者のほぼ全員が体験を語り合い、これについては、オーストラリアの雑誌に載せて活字化しよう、という計画や、Facebookを作って世界に発信しよう!という計画に進んでいます。また来年3月のハワイでのISA の国際会議でも同様に、アジア若手研究者育成のパネルを開こうということになりました!来年3月末のハワイ大会に、津田アジアネットワークの方々もぜひご参加ください!!

その後7月6,7日に上海・復旦大学で続けてEUの国際会議がありましたが、こちらはサポーターの大学院生はほぼ女性でしたが、執行部では10数人中2,3人しか女性がいませんでした。日中韓で女性参加者と幹部を増やしていく必要を痛感しました。

日本は世界第3位の経済大国なのに、ワーキングプアは1000万人を超えていて、その半分以上は女性、シングルマザーは子供を抱えて年100万円台で、日本のジェンダー平等指数は149か国中110位とは、悲しすぎます!

帰国後7月11日に、上野千鶴子さんを呼んで青山学院大学で講演会を開いた所、上野さん曰く、「30年前から日本のジェンダー研究者は現状を批判し続けてきた。でも今10代、20代の皆さんを前にして、変えられなくてごめんなさい、といわざるを得ない」といっていただきました。加えて「男性も含めてジェンダー問題に当事者意識を持て!!

我慢することは加害者と同じ。おかしいことは言っていくことが大事!」と呼び掛けてくれました。私も自分のできるところで、発信し続けていきたいと思います。

道智: 日本の女性と諸外国の女性の際立つ違いは感じられますか?

羽場: そうですね。日本の女性は優秀だしまじめだと思いますが一般的にはオリジナリティに欠けるように思います。アジアネットワークは別です!女性の場合、殻に閉じこもらないで自由にやっている人たちもたくさんいらっしゃり、尊敬しています。特に津田の同窓生は、世界中で活躍しており、素晴らしい女性!と感動したら、その方は津田出身者だった、ということがあり、嬉しく思うことが多いです。

おそらく18―22歳の多感な時期に、4年間女性の自立や社会への奉仕の精神に触れることは、一生の生き方の血肉となっており、津田スピリッツは本当に素晴らしく、社会に貢献する人たちを育てていると思います。

一方、北米7000人に及ぶISA(世界国際関係学会)#で副会長をやったり、ヨーロッパに住んで思ったことは、欧米は個人主義と言いながら、女性、マイノリティなどは、しっかり組織を作り、ネットワークを作って活動していること。ISAのWomen’s CaucusのEx Comに入って思ったことは、アメリカ人もヨーロッパ人も、結構つるみますね(笑)!一緒に食べ、飲み、遊び、Skypeで世界をまたいで楽しく議論を繰り返し、20人、30人、100人で何かをやり遂げていく。それを日本女性として学ばねばならないと思いました。人のネットワークはとても重要ですね。その意味で、アジアネットワークの皆様の力には、本当に敬服し、尊敬します! 人と交流する、社会に貢献する。これはとても大切なことであると学びました。

道智: なぜ一般的に日本の女性は日本での社会的地位が低いのか??!!(津田の卒業生で頑張っている人は多いが、、、ーこれは個人的な感想ー)それにアメリカ人やヨーロッパ人の女性が結構つるむのに比較して日本人女性がそうでないというのはちょっと驚きです。

羽場: ほんとうにそうですね~。日本では伝統的コミュニティーは強いけれど、他方で村八分、KY(空気読まない)ということがある。それが結果的に社会を変えづらくしているのではないでしょうか。伊藤詩織さんのように、セクハラで勇気をもって訴えると、アメリカでは大監督や大学学長でもすぐ降格になるけれど、日本では勇気をもって訴えた人が会社にも日本にもいられなくなって、仕事を辞めて海外に移住せざるを得なくなるという、ひどい実情がある。

日本でも市川房江さん以降のフェミニズムの伝統がありますが、先日の上野さんの講演でも、「変えられなくてごめんなさい」といわれた。特にSexをめぐる日本男性の反撃はすさまじいです。変わらない男性を変えていかなければならない。その際津田をはじめとする女性の力はとても大きいのではないでしょうか。日本だけでなく、アジア全般でもそうだと思います。だから今、アジアの若者たちと一緒に集まって、どうすれば、変えられるか、女性だけでなくLGBTやマイノリティも一緒に考え始めています。まだまだ始めたばかりですが。

道智さんをはじめとする津田のアジアネットワークの皆様のお仲間にもぜひ入れていただき、アジア女性の活躍をどう楽しく作っていけるのか、楽しい、面白い、役に立つ、ネットワークづくりを検討していきたいと思います!

ぜひ、皆様の楽しいお仲間に入れていただきたいです!これからもどうぞよろしくお願いいたします。

道智: お話をありがとうございました。ますますのご活躍をお祈りいたします。

* JAICOWSの活動内容については別サイトご参照: http://side.parallel.jp/jaicows/

# ISA: International Studies Association

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