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  • 圓佛紀美子(国大 23)

オンラインでウィズコロナの生活にいろどりを

                             

 東京では36度以上の猛暑が続いていた2020年夏のある日、私は、78歳になる父と中学生の娘とともに、ミャンマーの旧首都ヤンゴンにある、中央郵便局の前に立っていた。

「この建物は、イギリス統治時代に建てられた建物で・・・」ミャンマー人ガイドのエイリンさんの案内で、大通り沿いを歩くと、トラックの荷台にあふれんばかりの人が乗っている。「この人たちは、市役所の職員さんですねー。」との説明に、「えー、いいんですか?こんなにたくさん乗って。」と驚く私。

 一歩路地に入ると、いろいろな屋台が並び、ドラゴンフルーツやパパイヤなどの南国らしい色とりどりの果物に、娘も目を輝かせる。  

 

 少し歩いたところで、タクシーに乗り、ヤンゴン川のほとりで下車。かつて世界第2位の繁栄を誇っていたヤンゴン港があった場所で、周辺にはブリティシュカウンシル(現英国大使館)や、東洋3大ホテルの一つストランドホテルなど歴史的な建物も立ち並び、その重厚な佇まいに圧倒される。

 昼食は、近くのカフェでミャンマーを代表する麵料理「モヒンガー」を注文。ナマズの出汁のスープに、太めの麵が入っており、ライムを絞って食べる。初めて食す異国の味に、父も、「うん、美味しい。」とご満悦。そして、旅の最大のお楽しみの土産屋巡り。スタッフおすすめの店で、ミャンマーの伝統的な民族衣装である「ロンジー」をもとにしたテーブルランナーを見つけ、織物好きの私は迷わず購入し、旅は終わりを迎えた・・・・。

・・・と、ここまではごく普通の旅の一場面。これがすべて「オンライン」であったこと以外は。 そう、これは、コロナ禍を受けて、日本の旅行会社 H.I.S が企画したオンラインツアーに参加したときの様子です。 いま、新しい旅の形として注目されている「オンラインツアー」ですが、参加に至るまでには、ちょっとしたドラマがありました。

ことの始まりは、今から50年以上前のこと。当時の父の勤務先に、一人のミャンマー人男性が通信技術研修生として来日、父が案内役を務めたことがきっかけで、帰国後父とその研修生とはしばらく文通を続けていましたが、いつしか音沙汰がなくなっていました。ところが半世紀近くたった 2017年の夏、父のところに、なんと、東京の大学院に通っているという、かの研修生の孫娘さんから手紙が届き、急きょ家族で会うことになったのです。皆で亡きお祖父さまの思い出や、ミャンマーと日本の文化の違いについてなどを語り合い、まるで家族の集いような楽しいひとときを過ごしました。

2017 年、東京のレストランにて

(左から 2 番目が孫娘さん、一番右が筆者)


その後、帰国された孫娘さんから、「ぜひミャンマーに遊びに来てください」とのお誘いを受け、2020年の3月に家族で旅行する計画を立て、いざ、あと 1 ヶ月強で出発というところで、まさかのコロナ禍によるキャンセルとなってしまったのです。 父は、「いい夢を見させてもらった。もうこの歳だし、ミャンマーに行って皆さんに会うことも、観光することもできないだろう」と言いつつも、諦められない様子でした。そんな折に、新聞で見つけたのがH.I.S が新しく始めたというオンラインツアーの記事。これなら参加できる!と早速申し込んだのでした。

リアルタイムで現地とつなぎ、街歩きをしながら、自宅に届いたミャンマー料理を食べ、自宅にいながらにして現地のお店で画面を通して買い物をする・・・、通信分野で働き続けてきた父にとっても、まさに隔世の感のあるオンラインツアーでした。 ちなみに、このツアー、なんと某トーク番組の700回記念の特集に H.I.S の澤井社長が出演することとなり、ツアー当日は撮影クルーが自宅に待機、翌月の同番組に、旅行業界を生き残る秘策の一例として「出演」する、というおまけつきでした。 また、件の孫娘さんとご家族とは、別の日に、ヤンゴンと東京の私の自宅と実家とをオンラインでつなぎ、「再会」を果たすことができました。

           トーク番組「カンブリア宮殿」に「出演」

           オンラインでミャンマー人家族と「再会」            (左下写真の中央がお祖父さま)


新型コロナウィルスの感染拡大で、それまで当たり前だったことが当たり前でなくなり、人と会ったり、旅をしたりすることはもうできなくなってしまうのではないか、と暗澹たる思いがしていましたが、「オンライン」が希望を与えてくれています。 前述のような大手の旅行会社以外にも様々なオンラインツアーが提供されており、これまでに、美しい海の色を楽しむ座間味(沖縄)、砂漠とオアシスを巡るリビア、世界的建築家「フィン・ユール」の足跡をたどるデンマーク、クリスマスを素敵に過ごすフィンランド湖水地方の旅などのツアーに参加しました。 また、ツアーだけでなく、研修や打ち合わせのほか、アメリカなど各地に住んでいる旧友たちと 20年ぶりの「同窓会」をしたり、奈良の古民家で開催された染色ワークショップに自宅から参加したり、美術展の鑑賞前に学芸員が展示作品の見どころを解説する講座を受けたり、全国のハンドメイド作家が出店するオンラインマルシェでブースごとに作家さんと話しながら買い物をしたり、バングラデシュの友人の家に東京のフリースクールの子どもたちを案内したり・・・と今や趣味も仕事も「オンライン」なしでは考えられないほどです。

          娘と和文化に関するオンライン講座に参加


          現地の人との会話も楽しんだフィンランド湖水地方のツアー


 オンラインといえば、2015年に香港に在住していた際、津田梅子生誕150周年を記念して、香港、上海、北京、シンガポールの津田塾同窓会支部・グループをつないだ「ビデオカンファレンス」に参加したのも懐かしい思い出です。ビデオ会議専用の会議室を借りるなど香港支部長の道智万希子さんを中心に半年がかりで準備しましたが、今や誰でも自宅から簡単にビデオ会議ができる時代になりました。

 もちろん、実際に会ったり行ったり触れたりすることに勝るものはないと思いますが、オンラインには場所・空間を超えることができる、という利点があります。仕事や家事を終えた夜に参加することもできますし、感染を予防しながら、自分の世界を広げることができます。様々な制限のある生活はまだしばらく続きそうですが、オンラインはそんなウィズコロナの暮らしに、いろどりと刺激を与えてくれるものとなっています。

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