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  • 瀬口 佳穂里 (国大28)

パキスタン・カラチに暮らして

アジア各国在住の同窓生の皆様いかがお過ごしでしょうか。

私は2007~12年シンガポールに滞在し、その後2016年春~現在までパキスタンのカラチに住んでいます。

シンガポール滞在中は同窓会にもお世話になりました。

両国共に夫の駐在の帯同で、長男(現小6)長女(現小4)を連れての暮らしです。

この2か国での暮らしの違いは大きく、正直に言ってカラチに暮らし始めた当初はその違いを天国と地獄としか捉えられませんでした(笑)。

私はイスラム圏に住むのは初めてで、インドネシアやマレーシアは何度か旅行で訪れていますが、やはりここパキスタンは全てのことにおいて宗教的な重みがまるで違いました。

1日5回のお祈りがあり、その時間を知らせるアザーンというアナウンスが国中どこにいても聞こえるようになっています。始めの頃は毎朝4時半に大音量でアザーンが鳴り響くことに不安を覚えましたが、不思議なことに段々と慣れて「あ、アザーンだ。あと1時間半寝られる…」と暮らしの一部になり、疲れているときは全く聞こえなくなりました(笑)。

パキスタンについてはネガティブな情報が多く、子供を連れての帯同を心配されることも多いのは事実です。残念ながら治安や衛生面については否定することはできませんが、カラチに関してはここ2年ほどは以前より治安は良くなっていると感じます。しかし街中を歩くのはリスクがあるので、常に短銃を持ったガードとドライバーと一緒に行動しています。八百屋やパン屋に買い物に行くのもいつも一緒です。

ムスリムの人々の生活様式を尊重し、治安と衛生に気をつける、これらのことを忘れずに過ごせればここパキスタンでも楽しみをたくさん見つけることができます。

まず私が感じたことは、カラチでは他の都市ではできない暮らしが体験できるということです。東京やロサンゼルス、バンコク、シンガポールなど発展した都市では街は整備され、ショッピングモールが連立し、入っているテナントも似ていて大抵のものが手に入る時代です。

しかし、ここパキスタンは違います!パキスタン最大の都市であるカラチにもショッピングモールはあります。しかしこれまでの暮らしで求めていたスタンダードはありません。日本のものはありません。日本のものがどうしても欲しいときには週末に空路5時間かけてバンコクに買い出しに行くのです。(我が家は行きませんが笑)

先程触れた「他の都市ではできない暮らし」とは簡単に言えば不便な暮らしなのだと思います。でもそのこと自体を面白がるとここでの暮らしが楽しくなるのです。まずは色々なものを手作りするようになります。そして今あるもので賄い、手に入らないもののことは諦めます。これまでの物に溢れた便利な生活を振り返ると、ここでの不便さは子供達にもとても良い経験になっていると思います。

親日国であるパキスタンでは、日本人だと分かるとそれだけで信頼され親切にしてもらえます。そんな関係性のせいもありますが、パキスタンの人々はおおらかで人が良く、親切な人が多いと思います。日本文化に興味を持っている人も沢山います。私がここで多くのパキスタンの友人を持つことができたのもそんな背景があったからだと思います。ここカラチで暮らす邦人女性は現在40人弱、そのうち3分の1がパキスタン人と国際結婚された方です。日本人が少ないので私のような一個人もパキスタン女性のコミュニティに入ると必然的に目立ってしまいます。私を通して日本を見られていることを感じながら振る舞い、話をするように心掛けたいと思っていますが、急に何かが身につくわけは無い!と実感しています。そんなとき自分の中にあるものの核の一つとして、津田で過ごした4年間の学びとスピリット、実践英語の習得が大きな意味を持っていることに気がつきました。私はここでアセアンの国出身の女性とパキスタン人女性で構成されているAsean Womens and Friendsというクラブに入っています。毎月の定期ミーティングで交流を深め、その月の担当ホストは自分の国に関するデモンストレーションを行います。また 色々な分野で活動しているパキスタン人女性を招いて講演をしてもらうこともあります。貧しい子供達のための学校を支援している女性、街に溢れるゴミ問題を政治任せにせず人々の意識変えることで解決しようとしている女性、性暴力の被害者をサポートする団体を作った女性。パキスタンが直面している様々な問題の解決のために奮闘している女性達がいることに嬉しくなり、彼女達の存在がきっとこの国を良くしていってくれると希望を感じます。

最後にパキスタンで過ごす楽しみの中で忘れてはならないのは自然の美しさです。北部パキスタンにはK2をはじめとしたヒマラヤの美しい山々が連なっています。「風の谷のナウシカ」のモデルになったと言われているフンザの谷は本当に息を呑む美しさです。夜には降るような星が見られます。物質社会と切り離された素朴な暮らしをしている村の人々にも心動かされると思います。フライトのキャンセルや時間通りにいかない旅程などもあらかじめプランに組み込んで(笑)是非行ってみてください!

ここパキスタンで暮らすことは、大人になって久しい私に、世界にはこんな場所があってこんな風に暮らす人々がいるんだと新しい視野を広げてくれました。そして日本での当たり前の有難さを改めて感じ、日本に敬意を表してもらえる理由を理解するようになりました。水道の水が飲めて電車が時間通りに走り、子供は学校に行き、公共施設は清潔。当たり前に感じていましたが素晴らしいことです!

ここで私たち家族はこれまでになかった大きな驚きや感動、素敵な人々との出会い、そして時には不安やままならない苛立ちを経験しました。パキスタンの良さは一言で言えばおおらかさだと思います。人々にはおおらかな優しさがあり、物事は時間も含めおおらかに流れているように感じます。自分もそんな気持ちを持って暮らせば、ここでの生活がもっと豊かなものになると考えています。

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